デニス・メドウズさんは、『成長の限界』が刊行された1972年の時点で、
持続可能性のためには、人口と物質消費の増加に歯止めをかけなければならないと提言していました。
しかし、現実としてその提言は受け入れられず、従来のままの“成長”が続けられてきました。
その結果としての現状の解説から、講演ははじまりました。

●地球の現状について、デニス・メドウズさんのお話の内容をまとめます。

★成長の限界を超えてしまった人間の活動
いま世界はすでに成長の限界を超えた地点にある。
人間の活動は地球の扶養力の範囲を30%以上も超えている。
1972年の段階でコンピュータモデルを使って予想したものと似ている現実がある。
102名のノーベル賞受賞者を含む70ヵ国の1600人以上の科学者たちが、人類と自然界は、このままでは衝突してしまう、根本的な変化が焦眉の急である、と提言している。

先週の金曜日(11月9日)に出されたIPCCの最新の報告でも、いま根本的な変化をしないと、気候変動で難しい状況になるとされている。
世界の約36ヵ国が深刻な食糧危機に直面している。
成層圏のオゾン層に開いたオゾンホールは今年、人類史上かつてないほどの大きさに達している。

●将来に関わる部分では次のようなお話がありました。

★目前に迫っている資源の枯渇と混乱
乱獲と汚染が現在のまま続けば、あらゆる海産物は2048年には崩壊してしまうだろう。
今世紀半ばには、60ヵ国の70億を下らない人々が水不足に直面するかもしれない。
気候変動を無視することで、大戦争に伴うのと同じ規模の混乱が経済的・社会的活動に及ぶリスクを生みかねない。
今後25年の変化は、過去100年の変化を大きくしのぐものとなるだろう。
●とくに石油資源について、かなりの時間を割いてお話がありました。
要点だけをまとめると以下の内容でした。

★少なくとも現在レベル以上、石油資源に頼ることはできない
世界の石油生産量は、今年はじめにピークに達した可能性がある。
今後25年以内に産油量は半分以下になるだろう。
石油が枯渇すると、食料価格が上昇する、飛行機自動車による移動が減るなどのほかに、経済的、政治的、環境的なコストが高くつくようになる。
私たちが生き続けているかぎり石油価格は値上がりを続け、近い将来に数倍になるだろう。
●しかし、社会と私たちの習慣(ライフスタイル)が根本的な変化を遂げた場合のコンピュータモデルによる予測では、持続可能な、バランスのとれた地球はまだ可能であると、デニス・メドウズさんはいいます。
そのためのシナリオのひとつです。

★消費型のライフスタイル・習慣の根本的な転換を

たとえば二酸化炭素を排出し、枯渇が予測されてもいる化石燃料の問題に対して、4つの要素からの対策が考えられる。

「人口」「文化規範(ライフスタイル・習慣)」「効率性」「再生可能エネルギー」がそれで、「効率性」と「再生可能なエネルギー」は技術の分野としてまとめることができる。
京都議定書が決議されて10年経った現在は、もっぱらこの技術の分野での対策が行われている。
「人口」「文化規範(ライフスタイル・習慣)」の分野にはまったく手がつけられていない。
しかし化石燃料の消費を減らし、その他食糧不足などの問題にも対応していくには、文化規範の根本的な転換も行っていかなければならない。


ここで腕の組み方を使った簡単なエクササイズで、習慣を変えるということを会場の皆さんが実際に体験してみました。自然に腕を組んだときに上になる手首を、逆に下になるように組むというものです。

なかなか上手くいきません。デニス・メドウズさんはこう指摘します。
習慣を変えることは可能だけれど、実行の前によく考え、試してみないといけない。
そして新しい習慣は、それに馴れないうちは心地よくないかもしれない。

★問題の理解のしかた、捉え方について
人間は長いあいだ、短期的に良いことが長期的にも良い結果になる問題(簡単な問題)のなかで生きてきた。
しかし、持続可能性や環境については、短期的に良いことが長期的に悪い結果になる問題(難しい問題)が多い。
こうした場合には、評価までの時間軸を伸ばすことと、システム思考でよりよく理解することが効果的である。

講演の最後にデニス・メドウズさんが強調しておられたのは、行動することの大切さです。
“言葉より行動の方が重要”とさえおっしゃっていました。
35年前から警告を発し続けていらっしゃるデニス・メドウズさんの想いが強く伝わってきました。